空へ
空へ
父親の突然の死により、母親、妹とのちいさなアパートでの三人暮らしがはじまる。誰かを守ろうとすることも、守り切れないと泣くことも辛い。痛みと孤独を背負った少年の、その一歩一歩がかなでる鮮やかな心の成長の物語。
- 第39回日本児童文芸家協会賞
定価1,650円 (本体1,500円+税)
在庫あり
お寄せいただいた感想
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船田真喜さん
父親の死という、それまでのあたりまえをがらっと変えてしまうような大きな出来ごとがあって。それはただ「悲しみを乗り越える」ということだけじゃなくて、「これまでと違う日常を受け入れて」生活していかなくてはいけないということ。
そのなかで、お母さんが陽介に「できないことを”しかたない”ってあきらめるんじゃなくて、いま大事だと思うことを、かあちゃんは自分で選択したの。選んだの」と話す場面。ぐっときました。
自分のやりたいことと違ったって、状況を考えたらそうせざるをえない。そういうことって、大人でもたくさんあります。でもそれをしかたないからやった、誰かのためにそうしてやった、と思いながら生きていくと、さきざきけっこう辛くなる。それで辛くなってる大人というのも実際たくさんいると思うんです。
まだ中学一年生、自分の望みでない環境になって、もやもやしながらも健気に「しかたないからそうしなきゃ」でいっぱいの陽介に、「あきらめるんじゃなくて、選ぶの。考えて、ちゃんと自分で」と言うお母さんは、厳しいのかもしれません。でもそれは、ネガティブな選択でも、誰に強いられたのでもなく自分で決めたんだということが、未来の自分を助けてくれるはずだから。
中学一年生の陽介がどうにもならない現実にぶつかりながらも、少しずつ歩いていくこの物語は、子どもが大人になって、できるだけしあわせに生きていくために必要なものがちいさくたくさん詰まってる。なんだか生きづらいと思っている大人にも、じんわり効いてくれるような気がします。
最後、かつて父親がかっこよく担いでいた憧れの神輿を陽介が高く担ぎ上げる場面で、一緒に空に吸い込まれるような気持ちよさと、希望を感じられたのがとても良かったです。
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