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語るためのグリム童話(2007年7月刊・全7巻) に関して、貴重な実践報告をいただいたのでここに掲載させていただきます。
この選集は、小澤俊夫先生が、昔話は耳にきかせるもの、という思いを本のかたちにしたものです。そもそも、グリム童話じたいが、口承のものであったのですから、それを本来の姿で楽しみ味わうためには、語り口、ということがたいへん重要なことは、いうまでもないことでしょう。
中学年からは一人で黙読もできるよう配慮しましたが、語るための文体は、語って耳にきかせることで、小学校1年生でも十分に楽しんでくださっている。ということが、このお便りでわかりました。原内さんは、小澤昔ばなし大学の受講生でもあります。
どうぞ、これから、はじめてグリム童話にふれる方、よりたくさんの人の耳に、ゆたかな昔ばなしの世界を届けてください。 |
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「今、グリム童話を語る」 |
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〜子どもたちとほっとし合うひとときに〜 |
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「今日は、どこでお話を聞きたい?」
「お外がいい!」
「それじゃあ〜、ランドセルをしょって、体育館の裏に集合!」
「やったあ〜!」
4時間授業の日は、お掃除が終わったら、「1年3組お話タイム」。過密なカリキュラムの中、子どもたちを追い立てている私のせめてもの罪滅ぼしの時間、クラスみんなでくっつき合って、ほっとし合うひとときだ。
絵本もいいが、最近は、小澤俊夫さんの「語るためのグリム童話集」を読むのが人気だ。今まで、「語るためのグリム童話集」1巻〜7巻の中から、「灰かぶり」「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」「かえるの王さま」「こわがることを習いにでかけた若者の話」「ラプンツェル」「がちょう番の娘」「ブレーメンの音楽隊」などなど、目次を見て目に止まったお話をいろいろ読み聞かせた。
この童話集は、自分で読んでも面白いが、「大人が語りやすい」「子どもが聞いてわかりやすい」といったことを工夫した本なので、絵がなくても1年生を十分に夢中にさせることができるように思う。 |

ところで、「世界中の家庭の本棚に1冊はある」と言われるグリム童話集だが、最近の子どもたちは、ディズニーのアニメなら知っているが、それ以外のグリム童話は初めてという子が増えてきたような気がする。ひと頃流行った「本当は怖いグリム童話」なんていう本のせいか。
「語るためのグリム童話集」のお話は、ディズニーのアニメとは少し違う。たとえば、ディズニーのシンデレラは、魔法使いによって変身し、カボチャの馬車に乗ってお城の舞踏会に行き、その日にガラスの靴を置いてきて、王子が見事探し当ててくれる、いわゆるシンデレラストーリーとして描かれている。
だが、この童話集では、亡くなった実母の化身である鳥たちに、継母からの無理難題の言いつけを解決してもらったり、金銀の衣装をもらったりしながら、3回も舞踏会に行く。姉二人は足の指を切り落としてまでも、王子の持ってきた靴を履き、王子もすぐにはそのことに気付かない。シンデレラは、さまざまな意地悪や困難を乗り越えて、最後の最後にやっと幸せをつかみ取るという、グリムの原典に忠実な物語になっている。 |
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小澤俊夫さんは、「『灰かぶり』は、行きつ、戻りつする思春期の子どもの行動そのものを表しており」、子どもたちがその逡巡する思いと出会うことが大切であると述べている(「働くお父さんの昔話入門」より)。
1年生の子どもたちは、なぜか、そんな本物のグリムに引き込まれる。彼らは、私の声や表情を頼りに、「ダメ」な子、「ドジ」な子、「フコウ」な子が、ときに悪知恵を働かせ、勝負に負けたり、絶体絶命のピンチになったりしながら、たくさんの出会いの中で運をつかみ、自らの運命を切り開いていくお話の主人公となる。
私は、グリム兄弟が再話したヨーロッパの昔話が、今もなお、子どもたちの心を捉えるのは、「人生、何とかなるさ!」というストーリーに勇気づけられるからだと思う。「どんなことがあっても命を捨てちゃあいけないよ!」「弱い立場の者が生き延びるには、『知恵』を使おう!」「人間って、こんなもんさ!」など、グリム童話には、子どもが厳しい世の中を生き抜いていくための、先人たちからのメッセージ=愛情が込められているような気がするのだ。ヨーロッパだけでなく、世界のどこの国の昔話もきっと同じに違いない。価値のないものならば、わざわざ子や孫に代々語り継いではいかないだろうと思うからだ。
テレビをつけると、目を覆いたくなるような報道ばかり。なのに大人は、自分たちのことは棚に上げ、「学力向上!」「道徳やしつけが大事!」「不審者対策が急務!」などと、好き勝手なことを叫んでいる。そんな中、子どもたちは、自分にも未来にも自信がもてず、人とかかわることも怖くなり、テレビゲームやインターネットの世界に逃げ込んでいくのだろう。
だからこそ、私は、「大丈夫だよ!」「世の中、何とかなるよ!」という先人の思いを託した昔話を聞かせたい。昔話の語りを通して、子どもたちを勇気づける私の声が、彼らの耳の奥の奥に残っていくならば、嬉しい限りだ。
私は、この先人たちが語り継いできたメッセージを子どもに伝えることは、今を生きる大人の使命ではないかという気がしている。
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| 「語るためのグリム童話集」【全7巻】 |
小澤俊夫 監訳/オットー・ウベローデ 絵/
小澤昔ばなし研究所 再話 |
| セット定価11,760円(セット本体11,200円+税) |
| 各定価1,680円(本体1,600円+税) |
| 四六判/小学校中学年から |
| ISBN978-4-338-22900-5 |
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